主要なインプット及びアウトプット
ステークホルダ登録簿は、ステークホルダの特定とステークホルダのマネジメントのそれぞれで、インプットとアウトプットのどちらになるか。
特定ではアウトプット、マネジメントではインプットになる。
特定で洗い出して分析した結果をまとめたものが登録簿であり、 マネジメントは登録簿を見て、誰にどう関わるかを決める。 一つの文書があるプロセスのアウトプットになり、別のプロセスのインプットになるのは、 プロセスどうしが文書でつながっているからである。
登録簿に「この部長は計画に反対している」「影響力が大きい」と書いた。この登録簿をプロジェクトの全関係者が自由に閲覧できる場所に置くべきか。
置くべきではない。閲覧できる人を限るなど、取扱いに注意する。
登録簿には、ステークホルダの態度や影響力についての評価という、本人に見られると関係を損ねかねない情報が含まれる。 公開する部分と、プロジェクトマネージャなど限られた人だけが見る部分を分けて管理する。
プロジェクト開始時に作った登録簿を、終結まで変えずに使ってよいか。なぜか。
よくない。ステークホルダの入れ替わりや関心・態度の変化に合わせて更新する。
ステークホルダの特定は繰り返し行うプロセスなので、そのアウトプットである登録簿も更新され続ける。 古い登録簿のままでは、新しく加わった人への働きかけが漏れ、変わった要求にも気付けない。
ステークホルダ登録簿は、ステークホルダの特定のアウトプットとして作られ、ステークホルダのマネジメントやコミュニケーションの計画のインプットになる文書で、各ステークホルダの識別情報、要求と期待、関心と影響力、分類を記録し、プロジェクトを通じて更新する。
ステークホルダ登録簿に記録する主な項目
| 区分 | 主な項目 | 使い道 |
|---|---|---|
| 識別情報 | 氏名、所属組織、役職、プロジェクトでの役割、連絡先 | 誰に連絡し、誰が決める立場かを把握する |
| 評価情報 | 主な要求と期待、関心の度合い、影響力、特に関わりが深いフェーズ | 何を気にしていて、どの程度の力があるかを知る |
| 分類 | 社内か社外か、プロジェクトへの態度(支持・中立・抵抗など) | 働きかけの優先度と方針を決める |
ステークホルダ登録簿とは
Section titled “ステークホルダ登録簿とは”ステークホルダ登録簿は、プロジェクトのステークホルダを一覧にし、それぞれについて 識別情報・評価情報・分類を記録した文書である。ステークホルダの特定の結果をまとめたもので、 ステークホルダの対象群の中心になる文書といえる。
評価情報には、ステークホルダ分析(→ 細目 03)で得た関心と影響力の評価が入る。
社内の販売管理システムを刷新する場合の記入例を示す。
| 氏名・所属 | 役割 | 主な要求と期待 | 影響力 | 関心 | 態度 | 関わり方 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A 氏・担当役員 | スポンサー | 予算内での稼働、受注処理時間の短縮 | 高 | 高 | 支持 | 定期的に進捗と課題を報告、重要判断を仰ぐ |
| B 氏・営業部長 | 顧客側の責任者 | 外出先からの受注入力 | 高 | 高 | 支持 | 定例会に参加、要件の決定に関与 |
| C 氏・事務担当者 | 利用者 | 入力手順を大きく変えないこと | 低 | 高 | 抵抗 | 試作画面のレビュー、研修の案内 |
| D 氏・経理課長 | 影響を受ける部門 | 請求データの形式を維持すること | 中 | 低 | 中立 | 連携仕様の確認時に相談 |
C 氏のように態度が「抵抗」の相手は、懸念の中身を確かめて働きかける対象になる。 D 氏のように普段は関心が低い相手でも、連携仕様を決める時期には関わりを強める、というように、関わり方はフェーズで変わる。 「誰がいるか」だけでなく「その人が何を求め、どれだけの力を持ち、どんな態度か」まで記録する点が、単なる連絡先一覧との違いである。
インプットとアウトプットの流れ
Section titled “インプットとアウトプットの流れ”| プロセス | 主なインプット | 主なアウトプット |
|---|---|---|
| ステークホルダの特定 | プロジェクト憲章、プロジェクトの組織図など | ステークホルダ登録簿 |
| ステークホルダのマネジメント | ステークホルダ登録簿、プロジェクト計画 | 変更要求 |
- 特定では、憲章に書かれたスポンサーや主要な関係者、組織図に書かれた体制を手がかりに洗い出し、登録簿を作る
- マネジメントでは、登録簿を見てステークホルダごとの関わり方を決めて実行し、計画を変える必要が出れば変更要求を出す
- 登録簿はコミュニケーションの計画でも使われる。誰に、どの情報を、どの頻度で伝えるかを決めるには、誰がいて何に関心があるかが分かっている必要がある。 上の記入例なら、A 氏には定期的な進捗・課題の報告と重要判断の相談、B 氏には週次の定例会、C 氏には画面の試作と研修日程の連絡、というように伝え方が決まる
更新と取扱い
Section titled “更新と取扱い”登録簿は一度作って終わりではない。新しいステークホルダが現れたとき、人が交代したとき、 関心や態度が変わったときに更新する。フェーズの移行時に見直すのも効果的である。
また、態度や影響力の評価は機微な情報なので、閲覧できる人を限るなど取扱いに注意する。
他の「登録簿」との違い
Section titled “他の「登録簿」との違い”プロジェクトマネジメントには、ほかにも登録簿と呼ばれる文書がある。何を一覧にするかで区別する。
| 文書 | 一覧にするもの | 主に作るプロセス |
|---|---|---|
| ステークホルダ登録簿 | ステークホルダとその評価 | ステークホルダの特定 |
| 変更登録簿 | 変更要求とその処理結果 | 変更の管理 |
| リスク登録簿 | 特定したリスクとその評価・対応 | リスクの特定 |
試験での注意
Section titled “試験での注意”- ステークホルダ登録簿は特定のアウトプットであり、マネジメントのインプットになる。 インプットかアウトプットかは、どのプロセスから見るかで変わる
- 登録簿には連絡先だけでなく、要求・期待・影響力・態度といった評価情報も含める
- 登録簿はプロジェクトを通じて更新する。開始時に作って固定するという記述は不適切
- 変更要求を記録する変更登録簿、リスクを記録するリスク登録簿と取り違えない