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シラバスは「JISC の答申を受けて,主務大臣が制定する」と書いている。条文はどう書いているか。

条文の文言は「答申」ではなく「議決」である。 産業標準化法第十一条は「主務大臣は、産業標準を制定しようとするときは、 あらかじめ調査会の議決を経なければならない」と定める。 「答申」は第三条第 2 項が「関係各大臣の諮問に応じて答申し、又は関係各大臣に対し建議することが できる」という別の文脈で使っている語である。

「日本産業規格」という名称は何によって決まるか。誰でもこの名称を使えるか。

第二十条第 1 項が「第十一条、第十四条第二項又は第十五条第二項の規定により制定された産業標準は、 日本産業規格という」と定める。名称は制定の根拠条によって決まる。 同条第 2 項は「何人も、……制定された産業標準でないものについて日本産業規格 又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない」として、名称の使用そのものを禁じている。

産業標準化の対象にプログラムは入るか。条文のどこで分かるか。

入る。第二条第一項第六号が「プログラムその他の電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の 知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に 供されるものをいう。)……の種類、構造、品質、等級又は性能」を挙げ、 第七号が作成方法・使用方法、第八号が試験・測定の方法を挙げている。 第一号から第四号までが鉱工業品に関する事項を対象にし、第五号が鉱工業の技術に関する用語等を対象にするのとは 別に、電磁的記録の号が置かれている。

シラバスの用語例は JIS の部門記号を 2 つ挙げている。それぞれ何の部門か。この区分は法令にあるか。

**JIS X部門(情報処理)**と JIS Q部門(管理システム)の 2 つである。 ただしこの部門分けは産業標準化法の条文には現れない。シラバスの用語例にある表記である。 条文上の根拠を持つ語(産業標準・日本産業規格・日本産業標準調査会・主務大臣)とは区別しておく。

JIS への適合表示を付けることと、国が JIS を尊重することは、条文でどう書き分けられているか。

名宛人も語尾も違う。 第三十条第 1 項は製造業者等を名宛人として、主務大臣の登録を受けた者の認証を受けて 適合を示す特別な表示を付することが「できる」とする。義務づける形ではない。 第六十九条は国及び地方公共団体を名宛人として、一定の基準を定めるときは 日本産業規格を「尊重してこれをしなければならない」とする。

JIS にあたる日本産業規格の根拠は産業標準化法で、シラバスは JISC の答申を受けて主務大臣が制定すると書くが第十一条の文言は主務大臣が産業標準を制定しようとするときはあらかじめ調査会の議決を経なければならないであり、第二十条第一項が第十一条・第十四条第二項又は第十五条第二項の規定により制定された産業標準を日本産業規格というとし同条第二項は何人もこれと紛らわしい名称を用いてはならないとしており、その調査会(日本産業標準調査会)は第三条第一項により経済産業省に置かれ、第二条第一項は産業標準化の対象として鉱工業品のほかプログラムその他の電磁的記録・役務・事業者の経営管理の方法まで十五号を挙げ、適合の表示については第三十条第一項が製造業者等は登録を受けた者の認証を受けて特別な表示を付することができるとするのに対し第六十九条は国及び地方公共団体が一定の基準を定めるときは日本産業規格を尊重してこれをしなければならないとする一方、シラバスの用語例にある JIS X 部門・JIS Q 部門という区分は条文には現れない。

産業標準化法のうち、この細目で根拠にした条

条見出し定めていること
第一条法律の目的産業標準の制定及び普及による産業標準化の促進と、国際標準の制定への協力による国際標準化の促進
第二条第 1 項定義「産業標準化」=各号の事項を全国的に統一し、又は単純化すること。「産業標準」=そのための基準。対象は十五号
第二条第 2 項定義「国際標準化」=前項各号の事項を国際的に統一し、又は単純化すること
第三条(見出しなし)経済産業省に日本産業標準調査会を置く。調査会は、産業標準化及び国際標準化の促進に関し、関係各大臣の諮問に応じて答申し、又は建議することができる(制定の要件は第十一条にある)
第十一条産業標準の制定主務大臣は制定しようとするとき、あらかじめ調査会の議決を経なければならない
第二十条日本産業規格第十一条・第十四条第 2 項・第十五条第 2 項により制定された産業標準を日本産業規格という。何人も、それ以外のものについて日本産業規格又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない
第三十条鉱工業品の日本産業規格への適合の表示製造業者等は主務大臣の登録を受けた者の認証を受けて、適合を示す特別な表示を付することができる
第六十九条日本産業規格の尊重国及び地方公共団体は、一定の基準を定めるときは日本産業規格を尊重してこれをしなければならない

シラバスの用語例が挙げる部門記号(産業標準化法の条文には現れない。シラバスの表記である)

記号シラバスの括弧書き
JIS X 部門情報処理
JIS Q 部門管理システム

何を「統一し、又は単純化する」のか

Section titled “何を「統一し、又は単純化する」のか”

第二条第 1 項は「産業標準化」を「次に掲げる事項を全国的に統一し、又は単純化すること」と定義し、 「産業標準」を「産業標準化のための基準」と定義する。 統一の対象は十五号にわたり、大きく次のように並んでいる。

  1. 鉱工業品に関する事項(第一号〜第四号)。種類・型式・形状・寸法・構造・装備・品質・等級・ 成分・性能・耐久度・安全度(第一号)、生産方法や設計方法など(第二号)、包装(第三号)、 試験・分析・鑑定・検査・検定・測定の方法(第四号)。
  2. 鉱工業の技術について(第五号)。用語・略語・記号・符号・標準数・単位。
  3. 電磁的記録について(第六号〜第八号)。プログラムその他の電磁的記録の種類・構造・品質・等級・性能 (第六号)、作成方法・使用方法(第七号)、試験・測定の方法(第八号)。
  4. 建築物その他の構築物について(第九号)。
  5. 役務について(第十号〜第十三号)。種類・内容・品質・等級、調査・評価の方法、用語等、 提供に必要な能力。
  6. 事業者の経営管理の方法(第十四号)と、前各号に準ずるものとして主務省令で定める事項(第十五号)。

第一号の「鉱工業品」からは医薬品・農薬・化学肥料・蚕糸・農林物資が括弧書きで除かれている。 第十四号の経営管理の方法にも、日本農林規格等に関する法律に規定するものを除く括弧書きがある。

第二条第 2 項は、同じ十五号の事項を国際的に統一し、又は単純化することを「国際標準化」、 そのための基準を「国際標準」と定義する。国内と国際で、対象の事項をそろえた書き方になっている。

第三条第 1 項は「経済産業省に日本産業標準調査会(以下「調査会」という。)を置く」と定める。 第 2 項は、調査会が「この法律によりその権限に属させられた事項を調査審議する」ほか、 「産業標準化及び国際標準化の促進に関し、関係各大臣の諮問に応じて答申し、 又は関係各大臣に対し建議することができる」とする。

制定そのものの手続は第十一条にある。「主務大臣は、産業標準を制定しようとするときは、 あらかじめ調査会の議決を経なければならない」。 そして第二十条第 1 項が「第十一条、第十四条第二項又は第十五条第二項の規定により制定された産業標準は、 日本産業規格という」として名称を与える。 第二十条第 1 項は 3 つの規定を引いており、第十一条はそのうちの 1 つである。

第 2 項は名称の保護を定める。「何人も、……制定された産業標準でないものについて日本産業規格 又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない」。名宛人が「何人も」であり、 事業者に限られていない書き方になっている。

適合の表示と、国・地方公共団体による尊重

Section titled “適合の表示と、国・地方公共団体による尊重”

第三十条第 1 項は、鉱工業品の製造業者が「主務大臣の登録を受けた者の認証を受けて」、 その鉱工業品や包装・容器・送り状に「日本産業規格に適合するものであることを示す主務省令で定める 方式による特別な表示を付することができる」とする。 第 2 項は輸入業者・販売業者にも同じ枠組みを置く。 語尾は「できる」であり、表示を義務づける形ではない。

第 3 項は、その認証が 2 つの審査からなるとする。申請に係る鉱工業品のうち試験用のものについての 製品試験と、申請者の製造品質管理体制が主務省令で定める基準に適合するかどうかの審査である。 ただし書があり、申請に係る鉱工業品の全てについて製品試験を行うときは、 製造品質管理体制の審査を省略できる。

第六十九条は名宛人が国及び地方公共団体である。国及び地方公共団体は、鉱工業に関する技術上の基準を 定めるとき、買い入れる鉱工業品に関する仕様を定めるとき、その他第二条第一項各号に掲げる事項に関し 一定の基準を定めるときは「日本産業規格を尊重してこれをしなければならない」。 第三十条は製造業者等を名宛人として「できる」と書き、第六十九条は国及び地方公共団体を名宛人として 「しなければならない」と書く。

シラバスは「JIS(Japanese Industrial Standards)は,JISC(Japanese Industrial Standards Committee)の 答申を受けて,主務大臣が制定する標準である」と説明する。 第十一条による制定について、条文が要件としているのは「調査会の議決」である。 「答申」は第三条第 2 項にある語だが、そちらは諮問に応じて行うもので、制定の要件として書かれてはいない。

用語例には「JIS X部門(情報処理)」「JIS Q部門(管理システム)」「JSA(Japanese Standards Association:日本規格協会)」が挙がっている。 「JIS X部門」「JIS Q部門」という部門分けは産業標準化法の条文には現れない。 JSA もシラバスの用語例に挙がる語で、この細目で根拠にした条(第一条・第二条・第三条・第十一条・ 第二十条・第三十条・第六十九条)の範囲には現れない。 条文上の根拠を持つ語(産業標準・産業標準化・日本産業規格・日本産業標準調査会・主務大臣)とは 区別しておく。

法律の題名も「産業標準化法」で、規格の名称も第二十条第 1 項により「日本産業規格」である。 JIS の展開(Japanese Industrial Standards)とは語がそろっていない。

第一条は、この法律が「適正かつ合理的な産業標準の制定及び普及により産業標準化を促進すること」と 「国際標準の制定への協力により国際標準化を促進すること」の 2 つを手段として挙げ、 それによって「鉱工業品等の品質の改善、生産能率の増進その他生産等の合理化、取引の単純公正化及び 使用又は消費の合理化を図り、あわせて公共の福祉の増進に寄与すること」を目的とするとしている。

目的規定は「制定」だけでなく「普及」を並べている。第三十条は適合の表示を、 第六十九条は国及び地方公共団体の尊重義務を定めており、いずれも制定後の場面を扱う条だと読める。 また、「単純」という語が、第一条の「取引の単純公正化」と第二条第 1 項の「全国的に統一し、 又は単純化する」の双方に現れている。 ただし、目的規定がこの 2 か条を指しているとは条文には書かれていない。

ただし、制定の要件を調査会の議決とした理由や、表示を義務ではなく「できる」とした理由は、 これらの条文には書かれていない。

デファクトスタンダード との違い

観点JIS(このノート)デファクトスタンダード
決まり方についての記述主務大臣が調査会の議決を経て制定すること(産業標準化法第十一条。シラバスの説明文は「答申」と書く)事実上の標準として広く用いられていること(シラバスの説明文)
用語例に挙がる団体JISC(日本産業標準調査会)、JSA(日本規格協会)OMG、W3C
名称についての定め第二十条第二項が、何人も、制定された産業標準でないものについて日本産業規格又はこれと紛らわしい名称を用いてはならないとするシラバスの説明文にも、用語例の 2 団体(W3C・OMG)の自己記述にも、名称を保護する定めは出てこない