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請負(第六百三十二条)と委任(第六百四十三条)は、条文上それぞれ何を約する契約か。報酬は何に対して支払われるか。

請負は「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」 契約で、報酬は仕事の結果に対して支払われる。委任は「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、 相手方がこれを承諾する」契約で、第六百四十八条第一項により特約がなければ報酬を請求できない。

「準委任」は条文上どう定められているか。委任とどう違うか。

第六百五十六条が「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」と定めるだけである。 委任の規定を、法律行為でない事務の委託に準用する形で置かれている。 第六百四十三条の委任が「法律行為をすることを委託する」ものであるのに対し、 準委任は委託の対象が法律行為でない点で異なる。

民法は契約が申込みと承諾の合致で成立し方式を要しないことを原則とし、請負を仕事の完成とその結果に対する報酬の契約、委任を法律行為の委託の契約として区別する。準委任は法律行為でない事務の委託に委任の規定を準用する形で置かれている。

請負と委任・準委任の条文上の対比

観点請負委任・準委任
根拠となる条第六百三十二条第六百四十三条(委任)/第六百五十六条(準委任)
何を約するかある仕事を完成すること法律行為をすることの委託(準委任は法律行為でない事務)
報酬の定め方その仕事の結果に対して支払う特約がなければ請求できない(第六百四十八条第一項)
報酬を請求できる時期ここで取り上げた条文の範囲には定めが無い委任事務を履行した後(第六百四十八条第二項)
中途で終了した場合第六百三十四条が別に定める既にした履行の割合に応じて請求できる(第六百四十八条第三項)
不適合があった場合第六百三十六条が担保責任の制限を定めるここで取り上げた条文の範囲には対応する定めが無い

第五百二十二条第一項は、契約は「契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示」(申込み)に対して 相手方が承諾をしたときに成立すると定める。第二項は、契約の成立には法令に特別の定めがある場合を除き、 書面の作成その他の方式を具備することを要しないとする。

第六百三十二条は請負を、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して 報酬を支払うことを約することによって効力を生ずる契約と定める。 条文が置いているのは仕事の完成と、その結果に対する報酬という組み合わせである。 シラバスの用語例は「成果物の完成責任」を挙げているが、第六百三十二条にこの語は無い。

第六百三十六条は請負人の担保責任を制限する。請負人が種類または品質に関して契約の内容に適合しない 仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(引渡しを要しない場合は仕事が終了した時に不適合であるとき)、 注文者は、注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、 履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。 ただし請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

第六百三十四条は、注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき (第一号)、または請負が仕事の完成前に解除されたとき(第二号)について定めている。 可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなし、 請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。 第六百三十七条は、目的物の種類・品質に関する担保責任について期間の制限を置き、注文者が不適合を知った時から 一年以内に請負人へ通知しない場合の効果を「その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、 損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない」と定めている。

第六百四十三条は委任を、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することに よって効力を生ずる契約と定める。第六百五十六条は「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について 準用する」と定め、これが準委任にあたる。第六百五十六条は自らの定義を置くのではなく、 委任の節の規定を準用する形を採っている。

報酬について第六百四十八条第一項は、受任者は特約がなければ委任者に対して報酬を請求できないとする。 第二項は、報酬を受けるべき場合には委任事務を履行した後でなければ請求できないとする(同項にはただし書がある)。 第三項は、委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行ができなくなったとき(第一号)、 または委任が履行の中途で終了したとき(第二号)に、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できるとする。

請負が「仕事の結果」に報酬を結びつけているのに対し、委任・準委任では第六百四十八条第三項が 履行の割合に応じた報酬を認めており、報酬と仕事の完成との結びつきが条文上異なる形になっている。

第五百六十二条第一項は、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、 買主は売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し、または不足分の引渡しによる履行の追完を請求できるとする (同項にはただし書がある)。第二項は、その不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、 買主は追完の請求をすることができないとする。

なお、シラバスの用語例が挙げる「実費償還契約(CPIF)」「Time&Material契約(T&M,CPFF)」は、 ここで取得した条文には現れない。

労働者派遣法 との違い

観点民法(このノート)労働者派遣法
根拠となる条民法第六百三十二条(請負)労働者派遣法第二条第一号
条文が置いている要素仕事の完成と、その結果に対する報酬雇用関係と、他人の指揮命令を受けて労働に従事させること
指揮命令の扱い条文の要素になっていない定義の要素に含む

商法 との違い

観点民法(このノート)商法
報酬を請求できるかの出発点受任者は特約がなければ報酬を請求できない(第六百四十八条第一項)商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは相当な報酬を請求できる(第五百十二条)
契約不適合を理由とする請求の要件不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものでないことを要する(第五百六十二条第二項)。第五百六十二条には検査と通知の文言が無い商人間の売買では受領後の検査と、不適合を発見したときの直ちの通知を要する(第五百二十六条第一項・第二項。売主が悪意であった場合は第三項により第二項を適用しない)