労働者派遣法
労働者派遣の定義(第二条第一号)は、誰と誰の間に何の関係を置いているか。請負(民法第六百三十二条)とはどこが違うか。
定義は「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために 労働に従事させること」である。雇用関係は派遣元と労働者の間にあり、指揮命令関係は派遣先と労働者の間にある。 これに対し民法第六百三十二条の請負は「ある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して その報酬を支払う」契約で、注文者と労働者の間の指揮命令関係は条文の要素になっていない。
派遣先が受け入れられる期間について、条文は何を定めているか。
第四十条の二第一項が、派遣先は事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について、派遣可能期間を超える期間 継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならないと定める。第二項が、その派遣可能期間を三年としている。 第一項には各号の形で適用除外が置かれている。
労働者派遣は「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と定義され、雇用関係が派遣元との間に、指揮命令関係が派遣先との間に分かれて成立する点で、仕事の完成を目的とする請負と区別される。
flowchart LR
A["派遣元事業主"] -->|"雇用関係(第二条第一号)"| C["派遣労働者"]
A -->|"労働者派遣契約(第二十六条第一項)"| B["派遣先"]
B -->|"指揮命令(第二条第一号)"| C
三者の関係と、定義が置いている 2 つの関係
Section titled “三者の関係と、定義が置いている 2 つの関係”第二条第一号は「労働者派遣」を、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、 当該他人のために労働に従事させることと定義する。この一文には 2 つの関係が並んでいる。 雇用関係は「自己の雇用する労働者」という部分にあり、派遣元と派遣労働者の間にある。 指揮命令関係は「他人の指揮命令を受けて」という部分にあり、派遣先と派遣労働者の間にある。 同号はさらに、当該他人に対しその労働者を雇用させることを約してするものを含まないとしており、 派遣先に雇用させる約束を伴う形は定義から外れる。
第二号は「派遣労働者」を、事業主が雇用する労働者であって労働者派遣の対象となるものと定義し、 第三号は「労働者派遣事業」を、労働者派遣を業として行うことと定義する。
派遣元と派遣先の間を結ぶのが労働者派遣契約で、第二十六条第一項がこれを「当事者の一方が相手方に対し 労働者派遣をすることを約する契約」と定義したうえで、その当事者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、 締結に際して次に掲げる事項を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めることを求めている。 定めるべき事項には従事する業務の内容(第一号)、就業場所と組織単位(第二号)、 就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項(第三号)、派遣の期間と派遣就業をする日(第四号)、 始業・終業の時刻と休憩時間(第五号)などが含まれる。指揮命令する者を契約で定めさせる形になっている点は、 第二条第一号の定義が指揮命令関係を要素にしていることと対応している。
請負との違い
Section titled “請負との違い”民法第六百三十二条の請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して 報酬を支払うことを約する契約である。条文が置いているのは仕事の完成と、その結果に対する報酬であり、 注文者が作業者を指揮命令することは要素になっていない。 一方、労働者派遣の定義(第二条第一号)は「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に」という雇用関係と、 「他人の指揮命令を受けて」という指揮命令関係の両方を要素にしている。 二つの条文を並べると、請負は仕事の完成と報酬を要素とし、労働者派遣は雇用関係と指揮命令関係を要素とする点で、 条文が置いている要素そのものが異なる。 シラバスの用語例は「偽装請負」を挙げているが、ここで取得した条文にこの語は現れない。
期間制限と、労働者供給の禁止との関係
Section titled “期間制限と、労働者供給の禁止との関係”第四十条の二第一項は、派遣先が事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について、派遣元事業主から 派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けることを禁じ、第二項がその派遣可能期間を 三年としている。第一項には各号の形で適用除外が置かれている。
職業安定法第四条第八項は「労働者供給」を、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて 労働に従事させることと定義し、そこから労働者派遣法第二条第一号の労働者派遣に該当するものを除いている。 そのうえで職業安定法第四十四条が、何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行ってはならず、 労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならないと定める。
職業安定法第四条第八項の除外は労働者派遣法第二条第一号の労働者派遣を指している。 労働者派遣に当たるものは、この除外により労働者供給から外れ、 第四十四条の禁止の対象からも外れる形になっている。 シラバスの用語例は「二重派遣の禁止」を挙げているが、ここで取得した条文にこの語も現れない。
なぜそうなっているのか
Section titled “なぜそうなっているのか”第一条は、この法律の目的を「職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を 図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、 もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資すること」と述べている。
目的規定が単独の法律としてではなく「職業安定法と相まつて」という形で書かれていること、 そしてその職業安定法の側で第四条第八項が労働者供給の定義から労働者派遣を除いていることは、 2 つの法律が互いを参照しあう形で組み合わされていることを示している。 ただし、労働者派遣をこの位置づけに置いた立法上の趣旨は、これらの条文には書かれていない。
民法 との違い
| 観点 | 労働者派遣法(このノート) | 民法 |
|---|---|---|
| 根拠となる条 | 労働者派遣法第二条第一号 | 民法第六百三十二条(請負) |
| 条文が置いている要素 | 雇用関係と、他人の指揮命令を受けて労働に従事させること | 仕事の完成と、その結果に対する報酬 |
| 指揮命令の扱い | 定義の要素に含む | 条文の要素になっていない |