その他の法律
「男女雇用機会均等法」「パートタイム労働法」「フリーランス・事業者間取引適正化等法」の正式名称はそれぞれ何か。
順に「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和四十七年法律第百十三号)、 「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(平成五年法律第七十六号)、 「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和五年法律第二十五号)。 いずれもシラバスの表記と題名が大きく異なる。
労働契約法と労働基準法は、目的規定の書きぶりの上でどう違うか。
労働契約法第一条は、労使の自主的な交渉の下で労働契約が合意により成立し、又は変更されるという 合意の原則その他の基本的事項を定めることを通じて、労働者の保護と個別の労働関係の安定に資することを目的とする。 労働基準法第一条は労働条件の基準が最低のものであると位置づけている。 一方は合意の原則を、他方は最低基準を、それぞれ出発点に置いた書き方になっている。
シラバスが労働関連の「その他の法律」として挙げる 9 法は、シラバスの表記と題名が大きく異なるものが多く、その目的規定は合意の原則・危害防止基準の確立・均等な機会及び待遇の確保・職業生活と家庭生活との両立・高年齢者の安定した雇用の確保・公益通報者の保護など、それぞれが掲げる事項を条文自身の言葉で述べている。
シラバスの用語例が挙げる 9 法の表記・題名・法令番号
| シラバスの表記 | 題名(正式名称) | 法令番号 |
|---|---|---|
| 労働契約法 | 労働契約法 | 平成十九年法律第百二十八号 |
| 労働安全衛生法 | 労働安全衛生法 | 昭和四十七年法律第五十七号 |
| 労働施策総合推進法(パワハラ防止法) | 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 | 昭和四十一年法律第百三十二号 |
| 男女雇用機会均等法 | 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 | 昭和四十七年法律第百十三号 |
| 育児・介護休業法 | 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | 平成三年法律第七十六号 |
| パートタイム労働法 | 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 | 平成五年法律第七十六号 |
| フリーランス・事業者間取引適正化等法 | 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 | 令和五年法律第二十五号 |
| 高年齢者雇用安定法 | 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 | 昭和四十六年法律第六十八号 |
| 公益通報者保護法 | 公益通報者保護法 | 平成十六年法律第百二十二号 |
シラバスはこの細目に「その他の労働関連法規を理解する。」という説明文を置き、用語例として 9 法を挙げている。 ここでは各法の目的規定(第一条)が挙げているものを並べる。
労働契約・雇用管理の改善・取引の適正化
Section titled “労働契約・雇用管理の改善・取引の適正化”労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第一条は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、 労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を 定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、 労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号。 シラバスの表記はパートタイム労働法)第一条は、短時間・有期雇用労働者について適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、 通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等の措置を講じ、 通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを目的とする。
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号。 シラバスの表記はフリーランス・事業者間取引適正化等法)第一条は、個人が事業者として受託した業務に安定的に 従事できる環境を整備するため、特定受託事業者に業務委託をする事業者について 給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講じ、取引の適正化と就業環境の整備を図ることを 目的とする。目的規定が対象に挙げているのは労働者ではなく「特定受託事業者」である。
安全・健康・両立に関するもの
Section titled “安全・健康・両立に関するもの”労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第一条は、労働基準法と相まつて、 労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等、 総合的計画的な対策を推進することにより、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、 快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。労働基準法を名指しで参照している点は、 労働者派遣法第一条が職業安定法を参照しているのと同じ形である。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号。 シラバスの表記は育児・介護休業法)第一条は、育児休業・介護休業の制度、子の看護等休暇・介護休暇の制度を設け、 所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか支援措置を講ずることにより、 雇用の継続及び再就職の促進を図り、職業生活と家庭生活との両立に寄与することを目的とする。
均等・雇用政策・高年齢者・公益通報
Section titled “均等・雇用政策・高年齢者・公益通報”雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号。 シラバスの表記は男女雇用機会均等法)第一条は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり、 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して 妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。憲法の理念を明示的に挙げている点が 他の 8 法の目的規定と異なる。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 (昭和四十一年法律第百三十二号。シラバスの表記は労働施策総合推進法、パワハラ防止法)第一条第一項は、 国が少子高齢化による人口構造の変化等に対応して労働に関する政策全般にわたり必要な施策を 総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、雇用の安定・職業生活の充実・労働生産性の向上を 促進することを目的とする。施策を講ずる主体を「国が」と条文中に明示している点は、 ここで取り上げた 9 法の目的規定の中でこの法律だけに見られる書きぶりである。 なお「パワハラ防止法」はシラバスの表記であり、目的規定にこの語は現れない。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号。シラバスの表記は高年齢者雇用安定法)第一条は、 定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、 定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講ずることを目的とする。 目的規定が「定年の引上げ」「定年退職者」と、定年に関わる語を繰り返し用いている。
公益通報者保護法(平成十六年法律第百二十二号)第一条は、公益通報をしたことを理由とする 公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等、並びに事業者及び行政機関がとるべき措置等を 定めることにより、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命・身体・財産その他の利益の保護に関わる 法令の規定の遵守を図ることを目的とする。
なぜそうなっているのか
Section titled “なぜそうなっているのか”ここで取り上げた 9 法の目的規定は、労働条件の基準を最低のものと位置づける労働基準法第一条とは別に、 合意の原則(労働契約法第一条)、危害防止基準の確立(労働安全衛生法第一条)、 通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第一条) のように、それぞれが掲げる事項を条文自身の言葉で述べる形になっている。 ただし、これらを個別の法律として分けた立法上の趣旨は、各法の第一条には書かれていない。