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IPA のモデル契約書のアジャイル開発版は、請負と準委任のどちらを前提にしているか。ページはその理由をどう説明しているか。

準委任契約を前提にしている。ページは、アジャイル開発が開発の過程で機能の追加・変更や優先順位の変更に 柔軟に対応できる手法であることを述べたうえで、「そのため、本版は、あらかじめ特定した成果物の完成に対して 対価を支払う請負契約ではなく、ベンダ企業が専門家として業務を遂行すること自体に対価を支払う 準委任契約を前提としています」と説明している。

「あらかじめ特定した成果物の完成に対して対価を支払う」という説明は、民法のどの条文に対応するか。

民法第六百三十二条の請負である。同条は「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、 相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」契約と定めており、 仕事の完成と、その結果に対する報酬という 2 つが要素になっている。

シラバスがソフトウェア開発契約について挙げる IPA の情報システム・モデル取引・契約書には第二版とアジャイル開発版があり、アジャイル開発版は、あらかじめ特定した成果物の完成に対して対価を支払う請負契約ではなく、業務を遂行すること自体に対価を支払う準委任契約を前提としている。

IPA が公開している 2 系統のモデル契約書

観点情報システム・モデル取引・契約書(第二版)情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)
時期2020 年 12 月 22 日に公開2020 年 3 月に取りまとめ
位置づけ取引構造を透明化するためのツールユーザ企業とベンダ企業が緊密に協働することを目指すもの
対応する民法の条—第六百四十三条(第六百五十六条により準委任へ準用)
経緯経済産業省 2007 年版、IPA 2011 年版を経ている—

ソフトウェア開発契約が置かれる位置

Section titled “ソフトウェア開発契約が置かれる位置”

シラバスはこの細目を「委託に基づいて、ソフトウェアの開発を受託するソフトウェア契約であることを理解する。」と 説明している。「ソフトウェア開発契約」という語は、ここで取得した民法の条文には現れない。 関係する条文は、民法第六百三十二条の請負と、第六百四十三条の委任(法律行為でない事務は 第六百五十六条により準委任)である。

第六百三十二条の請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して 報酬を支払うことを約する契約である。第六百四十三条の委任は、当事者の一方が法律行為をすることを 相手方に委託し、相手方がこれを承諾する契約で、第六百五十六条により法律行為でない事務の委託にも この節の規定が準用される。

シラバスの用語例は「ソフトウェア開発委託モデル契約」「情報システム・モデル取引・契約書」を挙げている。 IPA は「情報システム・モデル取引・契約書」として 2 つを公開している。

第二版(2020 年 12 月 22 日公開)のページは、モデル契約を 「情報システム開発における各局面の取引構造を透明化するためのツール」と位置づけている。 経済産業省の 2007 年版、IPA の 2011 年版を経ている。

アジャイル開発版(2020 年 3 月に取りまとめられたもの)のページは、ユーザ企業とベンダ企業が 緊密に協働することを目指すと述べている。 こちらは準委任契約を前提としていることがページに明記されている。

契約類型の選び方が説明されている箇所

Section titled “契約類型の選び方が説明されている箇所”

アジャイル開発版のページは、契約類型の選択について次のように説明している。

開発対象全体の要件や仕様を確定してから開発を行うウォーターフォール開発とは異なり、アジャイル開発は、 そのプロセスの中で、機能の追加・変更や優先順位の変更、先行リリース部分の改善などに柔軟に対応することが できる手法です。そのため、本版は、あらかじめ特定した成果物の完成に対して対価を支払う請負契約ではなく、 ベンダ企業が専門家として業務を遂行すること自体に対価を支払う準委任契約を前提としています。

ここで請負契約を「あらかじめ特定した成果物の完成に対して対価を支払う」もの、 準委任契約を「ベンダ企業が専門家として業務を遂行すること自体に対価を支払う」ものと説明している点は、 民法第六百三十二条が仕事の完成と結果に対する報酬を要素にし、第六百四十三条・第六百五十六条が 事務の委託を要素にしていることと対応している。

なおシラバスの用語例は「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」も挙げている。

アジャイル開発版のページは、準委任契約を前提とした理由を自ら述べている。 アジャイル開発が「そのプロセスの中で、機能の追加・変更や優先順位の変更、先行リリース部分の改善などに 柔軟に対応することができる手法」であることを前提に置き、「そのため、本版は、あらかじめ特定した成果物の 完成に対して対価を支払う請負契約ではなく、ベンダ企業が専門家として業務を遂行すること自体に対価を支払う 準委任契約を前提としています」と続けている。

前提(機能の追加・変更や優先順位の変更、先行リリース部分の改善などに柔軟に対応することができる手法である)と 結論(請負ではなく準委任を前提とする)が、続けて置かれている。