産業機器関連法
道路運送車両法が定義する「自動運行装置」は、運転者の能力をどこまで代替するものか。
第四十一条第二項は、自動運行装置を、プログラムにより自動的に自動車を運行させるために必要な、 センサー並びに情報を処理するための電子計算機及びプログラムを主たる構成要素とする装置であって、 当該装置ごとに国土交通大臣が付する条件で使用される場合において、自動車を運行する者の操縦に係る 認知、予測、判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能を有し、かつ、 当該機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を備えるものと定義する。 「全部」とあるので、能力の一部を代替するにとどまるものはこの定義に当たらない。
航空法の「無人航空機」と、小型無人機等飛行禁止法の「小型無人機」は同じものか。
同じではない。どちらも「構造上人が乗ることができない」「遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に 操縦を行うことをいう。)により飛行させることができる」を 要素にするが、航空法第二条第二十二項の無人航空機には 「その重量その他の事由を勘案して……国土交通省令で定めるものを除く」という除外が付いているのに対し、 小型無人機等飛行禁止法第二条第三項の小型無人機にはその除外が置かれていない。 さらに小型無人機等飛行禁止法は「小型無人機等の飛行」に、特定航空用機器を用いて人が飛行することも 含めている(第二条第五項第二号)。
産業機器に関わる規制は、道路運送車両法第四十一条が自動運行装置を国土交通省令で定める技術基準に適合すべき自動車の装置の一つとして列挙してその定義を置き、航空法が無人航空機を定義して飛行の禁止空域と、一定の空域についての国土交通大臣の許可を定め、小型無人機等飛行禁止法が対象施設周辺地域の上空での小型無人機等の飛行を禁止し、労働安全衛生法第五十九条第三項と労働安全衛生規則第三十六条が産業用ロボットの可動範囲内で行う教示等(駆動源を遮断して行うものを除く)・検査等(運転中に行うものに限る)の業務を特別教育の対象とする、という形で置かれている。
4 つの法令が規制している単位
| 法令 | 条 | 規制の単位 | 条文上の要点 |
|---|---|---|---|
| 道路運送車両法 | 第四十一条第一項 | 自動車の装置 | 各号の装置が国土交通省令で定める技術基準に適合しなければ運行の用に供してはならない |
| 道路運送車両法 | 第四十一条第二項 | 用語の定義 | 「自動運行装置」=当該装置ごとに国土交通大臣が付する条件で使用される場合において能力の全部を代替し、作動状態の記録装置を備える装置 |
| 航空法 | 第百三十二条の八十五第一項 | 飛行する空域 | 各号の空域では、技能証明・機体認証等の条件を満たす場合でなければ飛行させてはならない(立入管理措置を講じないで飛行させるときは、一等無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が第一種機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合に限る) |
| 航空法 | 第百三十二条の八十五第二項 | 第一号の空域と、第二号の空域のうち一定の場合に限る | さらに国土交通大臣の許可を受けた場合でなければ飛行させてはならない |
| 小型無人機等飛行禁止法 | 第十条第一項 | 飛行する場所 | 対象施設周辺地域の上空では何人も小型無人機等の飛行を行ってはならない |
| 小型無人機等飛行禁止法 | 第十条第二項・第三項 | 適用除外と手続 | 3 つの類型は適用しない(防衛関係施設・空港とその指定敷地等の上空では第一号に限る)。ただし原則としてあらかじめ通報が必要 |
| 労働安全衛生規則 | 第三十六条第三十一号・第三十二号 | 可動範囲内の作業 | 教示等(駆動源を遮断して行うものを除く)・検査等(運転中に行うものに限る)の業務は特別教育を要する |
| 労働安全衛生規則 | 第百五十条の三 | 可動範囲内で教示等の作業を行うとき | 規程の作成、直ちに停止できる措置、起動スイッチ等の表示等(駆動源を遮断して行うときは第一号・第二号を除く) |
自動運行装置(道路運送車両法)
Section titled “自動運行装置(道路運送車両法)”第四十一条第一項は「自動車は、次に掲げる装置について、国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の 環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない」として、二十一の号を挙げる。 原動機及び動力伝達装置(第一号)、操縦装置(第三号)、制動装置(第四号)、前照灯その他の灯火装置及び反射器 (第十三号)などが並ぶ中に、**第二十号として「自動運行装置」**が置かれている。 自動運行装置は、他の装置と同じ列に置かれ、技術基準への適合が運行の条件になっている。
第二項がその定義で、次の要素からなる。
- プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたもの)により 自動的に自動車を運行させるために必要な装置であること。
- 主たる構成要素が、運行時の状態及び周囲の状況を検知するためのセンサー、 センサーから送信された情報を処理するための電子計算機及びプログラムであること。
- 当該装置ごとに国土交通大臣が付する条件で使用される場合において、自動車を運行する者の操縦に係る 認知、予測、判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能を有すること。
- 当該機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を備えること。
「全部を代替する」と「当該機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を備える」の 2 つが 定義の要件になっている点が要注意である。 なお、シラバスの説明文の表記は「自動運転装置」だが、法令の用語は自動運行装置である。
無人航空機(航空法)
Section titled “無人航空機(航空法)”第二条第二十二項は「無人航空機」を、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船 その他政令で定める機器であって構造上人が乗ることができないもののうち、 遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うこと)により飛行させることができるものと定義し、 括弧書きで「その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の 安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く」としている。 どの機体が除外されるかは省令に委ねられており、条文からは分からない。
第百三十二条の八十五第一項は、何人も、各号に掲げる空域においては、技能証明を受けた者が機体認証を受けた 無人航空機を飛行させる場合(立入管理措置を講ずることなく飛行させるときは、一等無人航空機操縦士の 技能証明を受けた者が第一種機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合に限る)でなければ、 無人航空機を飛行させてはならないとする。各号は、無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼす おそれがあるものとして国土交通省令で定める空域(第一号)と、それ以外の空域であって国土交通省令で定める 人又は家屋の密集している地域の上空(第二号)である。
第二項は、第一項第一号の空域、または同項第二号の空域(立入管理措置を講ずることなく飛行させる場合、 または立入管理措置を講じたうえで国土交通省令で定める総重量を超える無人航空機を飛行させる場合に限る)に ついて、第一項に規定する場合に該当し、かつ、国土交通大臣がその運航の管理が適切に行われるものと認めて 許可した場合でなければ飛行させてはならないとする。 第一項の条件を満たすだけでは足りず、許可が上乗せされる二段構えになっている。
小型無人機等飛行禁止法
Section titled “小型無人機等飛行禁止法”こちらは場所を単位にした禁止である。第十条第一項は「何人も、対象施設周辺地域の上空において、 小型無人機等の飛行を行ってはならない」とだけ定める。誰が飛ばすかを問わず、 対象施設周辺地域の上空かどうかで決まる。対象となる機体は第二条第三項から第五項までが定める 「小型無人機等の飛行」に限られるが、航空法のような重量等による機体の切り分けは置かれていない。
「対象施設」は第二条第一項の各号が定める。第一号は国の重要な施設等で、 国会議事堂・議員会館・両院議長公邸その他国会に置かれる機関の庁舎で東京都千代田区永田町一丁目又は 二丁目に所在するもの(イ)、内閣総理大臣官邸並びに内閣総理大臣及び内閣官房長官の公邸(ロ)、 対象危機管理行政機関の庁舎であって当該機関の担う危機管理に関する機能を維持するため特に必要なものとして 政令で定めるもの(ハ)、最高裁判所の庁舎であって東京都千代田区隼町に所在するもの(ニ)、 皇居及び御所であって東京都港区元赤坂二丁目に所在するもの(ホ)、指定された対象特別要人所在施設(ヘ)・ 対象政党事務所(ト)である。第二号以下は、対象外国公館等(第二号)、対象防衛関係施設(第三号)、 対象空港(第四号)、対象原子力事業所(第五号)で、いずれも第五条以下の規定により指定された施設をいう。 第一号のイ・ニ・ホのように所在地で範囲を限るものと、ハのように政令の指定で限るものがある。 「対象施設周辺地域」(第二項)は、対象施設の区分ごとに、第三条以下の規定により指定された地域をいう。
第二条第三項の「小型無人機」の定義は、飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他の航空の用に供することが できる機器であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることが できるもの、というものである。航空法の無人航空機の定義にある重量等による除外が置かれていない。 また第四項は「特定航空用機器」を、航空法第二条第一項に規定する航空機以外の航空の用に供することができる 機器であって、当該機器を用いて人が飛行することができるもの(高度又は進路を容易に変更することが できるものとして国家公安委員会規則で定めるものに限る)と定義し、 第五項は「小型無人機等の飛行」を、小型無人機を飛行させること(第一号)と 特定航空用機器を用いて人が飛行すること(第二号)の 2 つとする。
第十条第二項は、第一項を適用しない 3 つの類型を挙げる。対象施設の管理者又はその同意を得た者が 当該対象施設に係る対象施設周辺地域の上空において行う飛行(第一号)、 土地の所有者若しくは占有者(正当な権原を有する者に限る)又はその同意を得た者が当該土地の上空で行う飛行(第二号)、 国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行(第三号)である。 ただし柱書に括弧書きがあり、対象防衛関係施設(第二条第一項第三号)と対象空港(同項第四号)及びその 指定敷地等の上空で行うものについては、第一号に掲げるものに限るとされている。
第十条第三項は、第二項の飛行を行おうとする者に、あらかじめ、当該対象施設周辺地域を管轄する 都道府県公安委員会及び各号に定める者へ通報しなければならないとする(ただし書に例外がある)。 適用除外に当たっても手続が不要になるわけではない、という形になっている。
産業用ロボットと特別教育
Section titled “産業用ロボットと特別教育”労働安全衛生法第二十条は、事業者に、機械等による危険(第一号)、爆発性の物等による危険(第二号)、 電気・熱その他のエネルギーによる危険(第三号)を防止するため必要な措置を講じることを求める。 第五十九条は安全衛生教育を定め、第一項が労働者を雇い入れたときの教育、第二項が作業内容を変更したときへの準用、 第三項が「危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるもの」に労働者をつかせるときの特別の教育を定める。
その厚生労働省令が労働安全衛生規則第三十六条で、柱書が「法第五十九条第三項の厚生労働省令で定める 危険又は有害な業務は、次のとおりとする」として各号を並べる。 このうち第三十一号の中に、産業用ロボットの定義が括弧書きで置かれている。 マニプレータ及び記憶装置(可変シーケンス制御装置及び固定シーケンス制御装置を含む)を有し、 記憶装置の情報に基づきマニプレータの伸縮、屈伸、上下移動、左右移動若しくは旋回の動作又はこれらの複合動作を 自動的に行うことができる機械(研究開発中のものその他厚生労働大臣が定めるものを除く)である。 定義が法律ではなく省令の側に、しかも特別教育の対象業務を定める号の中に置かれている点が特徴である。
取得した号(第三十一号・第三十二号)が定める、産業用ロボットに関する業務は次の 2 つである。第三十六条のほかの号は取得していない。
- 第三十一号(教示等): 産業用ロボットの可動範囲内において行うマニプレータの動作の順序、位置若しくは 速度の設定、変更若しくは確認(教示等)の業務。ただし括弧書きで 産業用ロボットの駆動源を遮断して行うものを除く。可動範囲外にいる労働者が、可動範囲内で教示等を行う 労働者と共同して行う機器の操作の業務も含まれる。
- 第三十二号(検査等): 可動範囲内において行う検査、修理若しくは調整(教示等に該当するものを除く) 若しくはこれらの結果の確認で、産業用ロボットの運転中に行うものに限る。 こちらも、共同して可動範囲外で行う機器の操作の業務が含まれる。
規則第百五十条の三は、事業者が、可動範囲内で教示等の作業を行うときに、不意の作動による危険又は誤操作による 危険を防止するため講じなければならない措置を 3 つ挙げる。 第一号は、操作の方法及び手順(イ)、作業中のマニプレータの速度(ロ)、複数の労働者に作業を行わせる場合の 合図の方法(ハ)、異常時における措置(ニ)、異常時に運転を停止した後に再起動させるときの措置(ホ)、 その他必要な措置(ヘ)について規程を定め、これにより作業を行わせること。 第二号は、作業従事者又は監視する者が異常時に直ちに運転を停止することができるようにするための措置。 第三号は、作業を行っている間、起動スイッチ等に作業中である旨を表示する等、 作業従事者以外の者が起動スイッチ等を操作することを防止するための措置である。
この条にはただし書があり、駆動源を遮断して作業を行うときは第一号及び第二号の措置についてはこの限りでない。 第三号は除外されていないため、駆動源を遮断していても起動スイッチ等の操作を防止する措置は求められる。
なぜそうなっているのか
Section titled “なぜそうなっているのか”道路運送車両法第一条は、道路運送車両に関し、所有権についての公証等を行い、並びに安全性の確保及び 公害の防止その他の環境の保全並びに整備についての技術の向上を図り、併せて自動車の整備事業の健全な発達に 資することにより、公共の福祉を増進することを目的とするとしている。 自動運行装置が第四十一条の「保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準」に適合すべき装置として 他の装置と並べられていることと、この目的規定との関係は、条文には書かれていない。
航空法第一条は、国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続に準拠して、 航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因する障害の防止を図るための方法を定めるとしたうえで、 「あわせて無人航空機の飛行における遵守事項等を定めてその飛行の安全の確保を図ることにより」と述べ、 無人航空機に関する規律がこの法律の目的の一部として明記されている。
小型無人機等飛行禁止法第一条は、国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等、 防衛関係施設、空港及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行を禁止することにより、 これらの重要施設に対する危険を未然に防止し、もって国政の中枢機能等、良好な国際関係、 我が国を防衛するための基盤並びに国民生活及び経済活動の基盤の維持並びに公共の安全の確保に資することを 目的とすると述べる。守ろうとしている対象が第一条に列挙されており、 第十条の禁止が場所を単位にしていることと直接対応している。
労働安全衛生規則第百五十条の三が、駆動源を遮断して作業を行うときに第一号・第二号の措置を免除しつつ 第三号を免除していない理由は、これらの条文には書かれていない。