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デジタル社会形成基本法の第一条は、何を定めることによって、最終的に何に寄与しようとしているか。

第一条は、この法律が定めるものとして (1) 基本理念、(2) 施策の策定に係る基本方針、(3) 国・地方公共団体・ 事業者の責務、(4) デジタル庁の設置、(5) デジタル社会の形成に関する重点計画の作成、の 5 つを挙げる。 これらを定めることにより、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進し、 もって我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現に寄与することを目的とする。

この法律が定義する「デジタル社会」とは何か。定義の中で、情報をどう扱うことが要素になっているか。

第二条は「デジタル社会」を、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な 情報又は知識を世界的規模で入手し、共有し、又は発信するとともに、情報通信技術を用いて電磁的記録として 記録された多様かつ大量の情報を適正かつ効果的に活用することにより、あらゆる分野における創造的かつ 活力ある発展が可能となる社会と定義する。 ネットワークを通じた情報の入手・共有・発信と、情報通信技術を用いた情報の活用の 2 つが 定義の要素として並んでいる。

デジタル社会形成基本法は、デジタル社会の形成に関する基本理念と施策の策定に係る基本方針を定め、国・地方公共団体・事業者の責務を明らかにし、デジタル庁の設置と重点計画の作成について定めることにより、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進し、我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現に寄与することを目的とする法律である。

条と、そこで定められている内容の対応

条定めていること条文上の要点
第一条目的基本理念・基本方針・責務・デジタル庁の設置・重点計画の作成を定め、施策を迅速かつ重点的に推進する
第二条「デジタル社会」の定義ネットワークを通じて自由かつ安全に情報を入手・共有・発信することと、情報通信技術を用いた情報の活用により発展が可能となる社会
第十条個人及び法人の権利利益の保護等権利利益・国の安全等が害されないようにし、高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用による信頼性のある情報の自由かつ安全な流通の確保を図る
第二十二条多様な主体による情報の円滑な流通情報交換システムの整備、データの標準化、外部連携機能の整備と当該外部連携機能に係る仕様に関する情報の提供、その他の多様な主体による情報の円滑な流通の確保を図るために必要な措置(条文末尾に包括句があり、前の 3 つは例示)
第三十八条デジタル庁別に法律で定めるところにより、内閣にデジタル庁を置く
附則第一条施行期日令和三年九月一日から施行

目的規定が並べている 5 つの「定めるもの」

Section titled “目的規定が並べている 5 つの「定めるもの」”

第一条は、まずデジタル社会の形成が「我が国の国際競争力の強化及び国民の利便性の向上に資する」ことと、 「急速な少子高齢化の進展への対応その他の我が国が直面する課題を解決する上で極めて重要である」ことに 鑑み、という認識を置く。そのうえで、この法律が定めるものとして基本理念、施策の策定に係る基本方針、 国・地方公共団体及び事業者の責務、デジタル庁の設置、デジタル社会の形成に関する重点計画の作成を挙げる。 最後に、これらにより施策を迅速かつ重点的に推進し、もって我が国経済の持続的かつ健全な発展と 国民の幸福な生活の実現に寄与することを目的とする、と結ぶ。

第一条は「認識 → 定めるもの → 推進 → 寄与する先」という 4 段の順に書かれており、 条文の後半に出てくる「我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現」が最終的な目的にあたる。

第二条は「デジタル社会」を定義する。定義文は長いが、骨格は次の 2 つである。

  1. インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて、自由かつ安全に多様な情報又は知識を 世界的規模で入手し、共有し、又は発信すること。
  2. 官民データ活用推進基本法第二条第二項に規定する人工知能関連技術、同条第三項に規定する インターネット・オブ・シングス活用関連技術、同条第四項に規定するクラウド・コンピューティング・ サービス関連技術その他の従来の処理量に比して大量の情報の処理を可能とする先端的な技術をはじめとする 情報通信技術を用いて電磁的記録として記録された多様かつ大量の情報を適正かつ効果的に活用すること (この法律ではこれを「情報通信技術を用いた情報の活用」という)。

この 1 と 2 により、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会が「デジタル社会」である。 定義の中で人工知能関連技術・IoT 活用関連技術・クラウド・コンピューティング・サービス関連技術の内容そのものは 書かれておらず、官民データ活用推進基本法第二条の各項を引用する形になっている。 また「電磁的記録」は、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で 作られる記録をいう、と括弧書きで定義されている。

権利利益の保護と、情報の円滑な流通

Section titled “権利利益の保護と、情報の円滑な流通”

第十条は、デジタル社会の形成に当たって、高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用に より個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにするとともに、 高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用による信頼性のある情報の自由かつ 安全な流通の確保が図られなければならないとする。 「害されることのないように」という保護の側面と、「自由かつ安全な流通の確保」という流通の側面が 同じ条の中に並べて置かれている。どちらも「高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用」 という同じ限定の下に置かれている点も、条文の書きぶりから読み取れる。

第二十二条は、施策の策定に当たって講じられなければならない措置として、次のものを挙げる (条文は最後に包括句を置いており、以下は例示である)。

  • 情報交換システムの整備(多様な主体が設置する情報システムの相互の連携により迅速かつ安全に情報の授受を 行い、情報を共有することができるようにするための情報システム)
  • データの標準化(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第四条第二項第五号イに規定するもの)
  • 外部連携機能の整備(同号ハに規定するもの)と、当該外部連携機能に係る仕様に関する情報の提供
  • その他の多様な主体による情報の円滑な流通の確保を図るために必要な措置

「多様な主体による情報の円滑な流通の確保」は、この条の見出しに置かれた語であるとともに、 条文本文の末尾の包括句にも現れる。上の 3 つはその包括句の前に置かれた例示であり、 条文が求める措置がこの 3 つに限られるわけではない。

第三十八条は、基本理念にのっとり、デジタル社会の形成に関する内閣の事務を内閣官房と共に助けるとともに、 デジタル社会の形成に関する行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図るため、別に法律で定めるところにより、 内閣に、デジタル庁を置くと定める。デジタル庁を置くことは 「別に法律で定めるところにより」とされている。

附則第一条により、この法律は令和三年九月一日から施行された。

第一条は「デジタル社会の形成が、我が国の国際競争力の強化及び国民の利便性の向上に資するとともに、 急速な少子高齢化の進展への対応その他の我が国が直面する課題を解決する上で極めて重要であることに鑑み」と 書いており、立法の前提に置いた認識が条文自体に明記されている。 国際競争力・国民の利便性・少子高齢化への対応という 3 つが並べられ、そこから 「迅速かつ重点的に推進」という進め方が導かれている。

第十条が権利利益の保護と情報の自由かつ安全な流通の確保を 1 つの条に併記していることも、 条文の書きぶりから読み取れる。ただし、なぜこの 2 つを同じ条に置いたのか、 なぜデジタル庁を内閣に置くこととしたのかといった立法上の判断そのものは、これらの条文には書かれていない。

官民データ活用推進基本法 との違い

観点デジタル社会形成基本法(このノート)官民データ活用推進基本法
法令番号令和三年法律第三十五号平成二十八年法律第百三号
第一条が掲げる最終的な目的我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現
推進の対象デジタル社会の形成に関する施策官民データの適正かつ効果的な活用(官民データ活用)の推進に関する施策
行政組織についての定め第三十八条が内閣にデジタル庁を置くことを定める行政組織を置く条は根拠にしていない