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会社法は「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」の整備を、誰が決めるべき事項として位置づけているか。

第三百六十二条第四項第六号が、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他 株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして 法務省令で定める体制の整備を、取締役に委任することができない事項として列挙する。 さらに第五項が、大会社である取締役会設置会社においては、取締役会はこの第六号の事項を 決定しなければならないとする。委任禁止(第四項)と決定義務(第五項)は別の定めであり、 決定義務が課されるのは大会社である取締役会設置会社である。

金融商品取引法が求める「内部統制報告書」は、何について、何と併せて提出するものか。

第二十四条の四の四第一項により、有価証券報告書を提出しなければならない会社 (第二十三条の三第四項の規定により当該有価証券報告書を提出した会社を含む)のうち、 第二十四条第一項第一号に掲げる有価証券(金融商品取引所に上場されている有価証券。特定上場有価証券を除く)の 発行者である会社その他の政令で定めるものが対象になる。 対象は、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を 確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制であり、これを評価した報告書を、 有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出する。

企業が法令に適合することを確保する仕組みは、会社法第三百六十二条第四項第六号と同条第五項が取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備を取締役に委任できない事項とし大会社である取締役会設置会社にその決定を義務づけること、金融商品取引法第二十四条の四の四第一項が有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち第二十四条第一項第一号の有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものに内部統制報告書の提出を求めること、公益通報者保護法第十一条が第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報について従事者を定めることと体制の整備を事業者に求めること、という形で個別の法律に置かれている。

法令に適合することを確保する仕組みが、どの法律のどの条に置かれているか

法律条条文が求めていること名宛人
会社法第三百六十二条第四項第六号法令及び定款に適合することを確保するための体制等の整備は取締役に委任できない取締役会
会社法第三百六十二条第五項前項第六号の事項を決定しなければならない大会社である取締役会設置会社の取締役会
金融商品取引法第二十四条の四の四第一項財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保する体制を評価した内部統制報告書の提出有価証券報告書を提出しなければならない会社(第二十三条の三第四項により提出した会社を含む)のうち、第二十四条第一項第一号の有価証券(特定上場有価証券を除く)の発行者である会社その他政令で定めるもの
公益通報者保護法第十一条第一項第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報について公益通報対応業務従事者を定めなければならない事業者
公益通報者保護法第十一条第二項第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置事業者
外国為替及び外国貿易法第四十八条第一項特定地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出には経済産業大臣の許可輸出をしようとする者
外国為替及び外国貿易法第二十五条第一項特定技術を特定国において提供する取引等には経済産業大臣の許可特定国での提供=居住者若しくは非居住者/特定国の非居住者への提供=居住者

会社法が置いている「体制の整備」

Section titled “会社法が置いている「体制の整備」”

第三百六十二条第四項は、取締役会が「次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に 委任することができない」として 7 つの号を挙げる。重要な財産の処分及び譲受け(第一号)、多額の借財(第二号)、 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任(第三号)などと並んで、第六号に 「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに 当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして 法務省令で定める体制の整備」が置かれている。

条文を読むときに落としやすいのが、この第六号が 2 つの範囲を含んでいる点である。 1 つは取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制、 もう 1 つは株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために 必要な体制であり、子会社を含む企業集団まで及んでいる。 なお、第六号の文言に「内部統制」という語は用いられていない。 シラバスの用語例は「内部統制」を挙げているが、会社法第三百六十二条の取得した文言にはその語は現れない (金融商品取引法第二十四条の四の四第一項には「内部統制報告書」とある)。

第五項は、大会社である取締役会設置会社においては取締役会が第四項第六号の事項を決定しなければならないとする。 「大会社」は第二条第六号の定義があり、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が 五億円以上であること(イ)、または負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること(ロ)の いずれかに該当する株式会社をいう。第四項が名宛人を大会社に限っていないのに対し、 第五項の決定義務はこの大会社である取締役会設置会社に限られる点が違いである。

金融商品取引法の内部統制報告書

Section titled “金融商品取引法の内部統制報告書”

第二十四条の四の四第一項は、有価証券報告書を提出しなければならない会社 (第二十三条の三第四項の規定により当該有価証券報告書を提出した会社を含む)のうち、 第二十四条第一項第一号に掲げる有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものに対し、 事業年度ごとに内部統制報告書を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出することを求める。 評価の対象は、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を 確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制である。

会社法第三百六十二条第四項第六号の体制が「業務の適正」を広く対象にしているのに対し、 こちらは財務計算に関する書類その他の情報の適正性に絞られており、 評価した結果を報告書として提出させる形をとっている。

公益通報者保護法が事業者に求める体制

Section titled “公益通報者保護法が事業者に求める体制”

第十一条第一項は、事業者に対し、第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報を受け、 通報対象事実の調査をし、その是正に必要な措置をとる業務(公益通報対応業務)に従事する者を 定めなければならないとする。第二項は、これに加えて、公益通報者の保護を図るとともに、 公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、 第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の 必要な措置をとらなければならないとする。 「従事者を定める」ことと「体制を整備する」ことが、第一項と第二項に分けて置かれている。

第三条は、労働者である公益通報者が各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを 理由として前条第一項第一号に定める事業者(当該労働者を自ら使用するものに限る)が行った解雇は無効とする。 柱書が「次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたこと」を要件にしている点は 読み落とせない。通報しさえすれば常に解雇が無効になる、という書き方にはなっていない。

外国為替及び外国貿易法は、規制を貨物と技術の提供の 2 本立てで置いている。 第四十八条第一項は、国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める 特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者に、経済産業大臣の許可を求める。 第二十五条第一項は、同じく政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造若しくは使用に係る技術(特定技術)を 特定国において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者若しくは非居住者、または 特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者に、 経済産業大臣の許可を求める。

ソフトウェアや技術情報の提供が問題になるのは第二十五条の側であり、 特定国の非居住者への提供も対象に含まれているため、物を国外へ持ち出さない形でも許可が要る場合がある。 どちらの条も対象の具体的な範囲は政令に委ねられている。

シラバスの用語例は「企業理念」「企業倫理」「人権」「ビジネスと人権」「社会貢献」 「コーポレートガバナンス」「CSR」「ステークホルダ」「システム管理基準」を挙げているが、 ここで根拠にした条文にこれらの語は現れない。この細目で条文から確認できるのは、 上に挙げた体制の整備・報告書の提出・許可という個別の仕組みである。

金融商品取引法第一条は、この法律が「企業内容等の開示の制度を整備するとともに、金融商品取引業を行う者に関し 必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により」有価証券の発行及び金融商品等の取引等を 公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を 図り、もって国民経済の健全な発展及び 投資者の保護に資することを目的とするとしている。内部統制報告書が財務計算に関する書類その他の情報の 適正性に絞られているのは、この「開示の制度」を目的の柱に置いた法律であることと対応した書きぶりだと読める。

外国為替及び外国貿易法第一条は、対外取引が「自由に行われることを基本とし、対外取引に対し 必要最小限の管理又は調整を行うことにより」対外取引の正常な発展並びに我が国又は国際社会の平和及び 安全の維持を期すことを目的とすると書いている。第四十八条第一項・第二十五条第一項が、対象を 「国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める」ものに限っているのは、 この「自由が基本・管理は必要最小限」という第一条の立て方と対応していると読める (条文がそう述べているわけではない)。

会社法第三百六十二条第四項・第五項がなぜ体制の整備を取締役会の決定事項としたのかという立法上の趣旨は、 これらの条文には書かれていない。

情報倫理・技術者倫理 との違い

観点コンプライアンス(このノート)情報倫理・技術者倫理
根拠として置かれているもの会社法・金融商品取引法・公益通報者保護法・外為法といった法令の条文情報処理学会 倫理綱領のような、学会が定めた自主的な行動規範
名宛人取締役会・事業者・取引を行おうとする居住者など、条文が指定する者綱領を定めた学会の会員
条文に置かれている義務・効果経済産業大臣の許可を受けなければならないという義務、各号に定める公益通報を理由に前条第一項第一号に定める事業者(当該労働者を自ら使用するものに限る)が行った解雇の無効など、法律上の効果が条文に置かれている綱領には法律上の効果は置かれていない(法令ではないため)