金融商品取引法
有価証券報告書を提出しなければならないのはどんな会社で、いつまでに提出するのか。
第二十四条第一項により、有価証券の発行者である会社であって、その会社が発行者である有価証券 (特定有価証券を除く)が同項各号に掲げる有価証券のいずれかに該当する場合に提出義務が生じる。 各号は、金融商品取引所に上場されている有価証券(第一号。特定上場有価証券を除く)、 流通状況がこれに準ずるものとして政令で定める有価証券 (第二号。流通状況が特定上場有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券を除く)、 募集又は売出しにつき一定の規定の適用を受けた有価証券(第三号。前二号に掲げるものを除く)、 株券等の政令で定める有価証券で一定の事業年度の末日における所有者の数が政令で定める数以上であるもの (第四号。前三号に掲げるものを除く)である。各号にはそれぞれ除外の括弧書きが置かれている。 提出期限は、内国会社にあっては当該事業年度経過後三月以内(やむを得ない理由があるときは あらかじめ内閣総理大臣の承認を受けた期間内)、外国会社にあっては政令で定める期間内で、 提出先は内閣総理大臣である。なお同項にはただし書が置かれている(内容はここでは扱わない)。
内部統制報告書は何を評価した報告書か。有価証券報告書とどういう関係で提出するか。
第二十四条の四の四第一項により、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る 財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、 内閣府令で定めるところにより評価した報告書である。 これを有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出する。 対象は有価証券報告書の提出義務がある会社のうち、第二十四条第一項第一号に掲げる有価証券 (金融商品取引所に上場されている有価証券。特定上場有価証券を除く)の発行者である会社 その他の政令で定めるものである。
金融商品取引法は、企業内容等の開示の制度を整備するとともに金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定めること等により、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とし、第二十四条第一項が該当する有価証券(特定有価証券を除く)の発行者である会社に事業年度ごとの有価証券報告書の提出を(同項にはただし書が置かれている)、第二十四条の四の四第一項がそのうち第二十四条第一項第一号に掲げる有価証券(特定上場有価証券を除く)の発行者である会社その他の政令で定めるものに内部統制報告書を有価証券報告書と併せて提出することを義務づけている。
2 つの報告書の対比
| 観点 | 有価証券報告書(第二十四条第一項) | 内部統制報告書(第二十四条の四の四第一項) |
|---|---|---|
| 提出義務者 | 同項各号に該当する有価証券(特定有価証券を除く)の発行者である会社 | 上記のうち第一号(上場されている有価証券。特定上場有価証券を除く)の発行者である会社その他政令で定めるもの |
| 記載・評価の対象 | 商号、属する企業集団及び会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項等 | 当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制 |
| 頻度 | 事業年度ごと | 事業年度ごと |
| 提出先 | 内閣総理大臣 | 内閣総理大臣 |
| 提出の仕方 | 内国会社は事業年度経過後三月以内(承認を受けた期間内の例外あり)。第一項にはただし書がある | 有価証券報告書と併せて提出 |
| 添付 | 定款その他内閣府令で定める書類を添付(第六項) | 第一項には添付の定めなし(第二項以降はここで扱っていない) |
目的規定が並べている手段と目的
Section titled “目的規定が並べている手段と目的”第一条は、この法律が行うこととして (1) 企業内容等の開示の制度を整備すること、 (2) 金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定めること、(3) 金融商品取引所の適切な運営を確保すること、 の 3 つを「等」を付けて挙げる。 これらにより、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、 資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、 もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする。 シラバスの説明文も、企業内容などの開示の制度を通じて国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを この法律の目的として挙げている。
有価証券報告書
Section titled “有価証券報告書”第二十四条第一項は、有価証券の発行者である会社について、その会社が発行者である有価証券 (特定有価証券を除く)が各号のいずれかに該当する場合に、内閣府令で定めるところにより、 事業年度ごとに報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないとする。 記載事項は、当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する 重要な事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項である。 会社単体だけでなく、属する企業集団の経理の状況も記載の対象に入っている。
各号は次のとおりで、上場を基準とする第一号から、流通状況(第二号)、募集・売出しの際に一定の規定の適用を 受けたこと(第三号)、所有者の数(第四号)へと、対象の広げ方が変わっている。
- 金融商品取引所に上場されている有価証券(特定上場有価証券を除く)
- 流通状況が前号に掲げる有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券(同様の除外あり)
- その募集又は売出しにつき第四条第一項本文ほかの規定の適用を受けた有価証券(前二号に掲げるものを除く)
- 株券等の政令で定める有価証券で、当該事業年度又は当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度の いずれかの末日における所有者の数が政令で定める数以上であるもの(前三号に掲げるものを除く)。 ただし当該有価証券が有価証券投資事業権利等又は電子記録移転権利である場合は、 当該事業年度の末日における所有者の数で判定する読み替えが括弧書きで置かれている
提出期限は内国会社と外国会社で書き分けられており、内国会社は事業年度経過後三月以内、 やむを得ない理由により当該期間内に提出できないと認められる場合はあらかじめ内閣総理大臣の承認を受けた 期間内となる。第一項にはただし書が置かれている。
第六項は、有価証券報告書に、定款その他の書類で公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして 内閣府令で定めるものを添付しなければならないとする。
内部統制報告書
Section titled “内部統制報告書”第二十四条の四の四第一項は、有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、 第二十四条第一項第一号に掲げる有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものを対象に、 事業年度ごとに内部統制報告書を提出させる。 評価の対象は、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を 確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制である。 提出は有価証券報告書と併せて行い、外国会社報告書を提出する場合には当該外国会社報告書と併せる。
対象範囲が有価証券報告書より狭い点(第二十四条第一項の 4 つの号のうち第一号を基準にしていること)と、 評価の対象が財務計算に関する書類その他の情報の適正性に絞られている点が、この条の要点である。 会社法第三百六十二条第四項第六号が「業務の適正」を確保するための体制を広く対象にしているのとは、 範囲の取り方が異なる。
なぜそうなっているのか
Section titled “なぜそうなっているのか”第一条は、企業内容等の開示の制度の整備等を手段として掲げ、その先に「有価証券の発行及び金融商品等の取引等を 公正にし」「有価証券の流通を円滑にする」「資本市場の機能の十全な発揮による……公正な価格形成等を図り」を置き、 最終的に「国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資すること」を目的としている。 開示(第二十四条の有価証券報告書)と体制の評価(第二十四条の四の四の内部統制報告書)が この目的規定とどう関係するかは、取得した条文には書かれていない。
ただし、なぜ内部統制報告書の対象を上場有価証券の発行者その他政令で定めるものに限ったのかという 立法上の判断は、これらの条文には書かれていない。
会社法 との違い
| 観点 | 金融商品取引法(このノート) | 会社法 |
|---|---|---|
| 法令番号 | 昭和二十三年法律第二十五号 | 平成十七年法律第八十六号 |
| 第一条が掲げるもの | 国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資すること(目的) | 会社の設立、組織、運営及び管理は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによること(趣旨) |
| 「体制」についての定めの範囲 | 当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制(第二十四条の四の四第一項) | 取締役の職務の執行の法令及び定款への適合と、子会社から成る企業集団を含む業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制(第三百六十二条第四項第六号) |
| 書類の提出先 | 内閣総理大臣(有価証券報告書・内部統制報告書) | 提出先を定める条は根拠にしていない(第四百三十五条は第二項で計算書類及び事業報告等の作成を、第四項で計算書類及びその附属明細書の十年間の保存を定める) |