会社法
第三百二十六条は、株式会社の機関の設置についてどう書き分けているか。
第三百二十六条第一項により、株式会社には一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。 第二項により、同項が掲げる取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等は、 定款の定めによって置くことができる。第一項が設置を義務づける形、第二項が定款の定めによって置くことが できる形と、2 つの項で書き分けられている。
株主総会の権限は、取締役会設置会社かどうかでどう変わるか。
第二百九十五条第一項は、株主総会が「この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他 株式会社に関する一切の事項」について決議できるとする。 第二項は、前項にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は 「この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り」決議できるとする。 取締役会を置くと、株主総会の決議事項は法定事項と定款で定めた事項に絞られる。
会社法は、会社の設立、組織、運営及び管理について、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか定めを置く法律で、第三百二十六条第一項が株式会社に取締役を置くことを義務づけ、第二項が取締役会・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人・監査等委員会又は指名委員会等を定款の定めによって置くことができるとし、取締役会設置会社では株主総会の決議事項が法定事項と定款で定めた事項に限られること(第二百九十五条第二項)などを定めている。
機関と、その職務・権限を定める条(第三百二十六条第二項は、取締役会・監査役を定款の定めによって置くことができるものとして掲げている)
| 機関 | 条 | 条文上の職務・権限 |
|---|---|---|
| 株主総会 | 第二百九十五条第一項 | この法律に規定する事項及び会社に関する一切の事項について決議できる |
| 株主総会 | 第二百九十五条第二項 | 取締役会設置会社では、法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議できる |
| 取締役 | 第三百二十六条第一項 | 一人又は二人以上を置かなければならない(第一項が設置を義務づける形) |
| 取締役会 | 第三百六十二条第一項・第二項 | すべての取締役で組織し、業務執行の決定・取締役の職務の執行の監督・代表取締役の選定及び解職を行う |
| 代表取締役 | 第三百六十二条第三項 | 取締役会が取締役の中から選定しなければならない |
| 監査役 | 第三百八十一条第一項 | 取締役(会計参与設置会社では取締役及び会計参与)の職務の執行を監査し、監査報告を作成する |
| 執行役 | 第四百十八条 | 取締役会の決議によって委任を受けた指名委員会等設置会社の業務の執行の決定と、業務の執行 |
この法律の位置づけと、押さえておく定義
Section titled “この法律の位置づけと、押さえておく定義”第一条は「会社の設立、組織、運営及び管理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、 この法律の定めるところによる」と述べる。他の法律に特別の定めがあればそちらが優先する、という関係を 最初に置いた条である。
第二条の定義のうち、ここで根拠にしたのは次の 3 つである。
- 公開会社(第五号): その発行する全部又は一部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について 株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社。 「株式を公開している(上場している)会社」ではなく、譲渡制限の定めの有無で決まる定義になっている。
- 大会社(第六号): 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が五億円以上(イ)、 または負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上(ロ)のいずれかに該当する株式会社。 資本金と負債は「いずれかに該当」でよい。
- 指名委員会等設置会社(第十二号): 指名委員会、監査委員会及び報酬委員会(指名委員会等)を置く株式会社。
シラバスの用語例は「委員会設置会社」という表記を挙げているが、会社法第二条第十二号の語は 指名委員会等設置会社である。
機関の設置と株主総会の権限
Section titled “機関の設置と株主総会の権限”第三百二十六条第一項は、株式会社に一人又は二人以上の取締役を置かなければならないとする。 第二項は、株式会社が定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、 監査等委員会又は指名委員会等を置くことができるとする。第一項は「置かなければならない」、 第二項は「置くことができる」と書き分けられている。
第二百九十五条は株主総会の権限を、機関設計に応じて 2 段階で書き分ける。 第一項は原則として一切の事項を決議できるとし、第二項は取締役会設置会社について 「この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り」と絞る。 第三項は、この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の 株主総会以外の機関が決定できることを内容とする定款の定めはその効力を有しないとする。 定款で自由に権限を移すことはできない、という限界がここに置かれている。
取締役会の権限と、取締役に委任できない事項
Section titled “取締役会の権限と、取締役に委任できない事項”第三百六十二条第一項は、取締役会がすべての取締役で組織するとし、第二項はその職務として 業務執行の決定(第一号)、取締役の職務の執行の監督(第二号)、代表取締役の選定及び解職(第三号)を挙げる。 第三項は、取締役会が取締役の中から代表取締役を選定しなければならないとする。
第四項は、取締役会が「次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない」とし、 次の 7 つを挙げる。委任できない範囲はこの 7 項目に限られず、「その他の重要な業務執行の決定」まで及ぶ。
- 重要な財産の処分及び譲受け
- 多額の借財
- 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
- 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
- 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として 法務省令で定める事項
- 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに 当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして 法務省令で定める体制の整備
- 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
第五項は、大会社である取締役会設置会社においては、取締役会が前項第六号に掲げる事項を 決定しなければならないとする。第四項は「委任できない」という禁止、第五項は「決定しなければならない」という 義務であり、後者は大会社である取締役会設置会社に限られている点が違う。 シラバスの用語例は「内部統制」を挙げているが、第六号の文言にこの語は用いられていない (第六号の文言に「内部統制」という語は用いられていない)。
監査役・執行役・計算書類
Section titled “監査役・執行役・計算書類”第三百八十一条第一項は、監査役が取締役(会計参与設置会社にあっては取締役及び会計参与)の 職務の執行を監査し、法務省令で定めるところにより監査報告を作成しなければならないとする。
第四百十八条は、執行役の職務を 2 つ挙げる。第四百十六条第四項の規定による取締役会の決議によって 委任を受けた指名委員会等設置会社の業務の執行の決定(第一号)と、 指名委員会等設置会社の業務の執行(第二号)である。 第四百十八条はいずれの職務も指名委員会等設置会社について定めており、 委任を受けた決定と執行の両方が執行役の職務として並んでいる。
第四百三十五条は計算書類等について定める。第一項は成立の日における貸借対照表の作成、 第二項は各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他会社の財産及び損益の状況を示すために 必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの)及び事業報告並びにこれらの附属明細書の作成を求める。 第三項はこれらを電磁的記録をもって作成できるとし、第四項は計算書類を作成した時から十年間、 当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならないとする。 シラバスの用語例が挙げる「事業報告」は、第二項で計算書類と並べて作成が求められている書類である。
金融商品取引法 との違い
| 観点 | 会社法(このノート) | 金融商品取引法 |
|---|---|---|
| 法令番号 | 平成十七年法律第八十六号 | 昭和二十三年法律第二十五号 |
| 第一条が掲げるもの | 会社の設立、組織、運営及び管理は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによること(趣旨) | 国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資すること(目的) |
| 「体制」についての定めの範囲 | 取締役の職務の執行の法令及び定款への適合と、子会社から成る企業集団を含む業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制(第三百六十二条第四項第六号) | 当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制(第二十四条の四の四第一項) |
| 書類の提出先 | 提出先を定める条は根拠にしていない(第四百三十五条は第二項で計算書類及び事業報告等の作成を、第四項で計算書類及びその附属明細書の十年間の保存を定める) | 内閣総理大臣(有価証券報告書・内部統制報告書) |